M.008 · MONDO-DI NOTA · 土地
泥の帯 どろのおび
DORO-DI BANDA
果汁化の下流に発生する地層。記憶の残渣が泥に混じる帯域。
泥の帯は、果汁化が大規模に行われた地域の下流に、時間をかけて堆積した地層である。粘性の高い黒褐色の泥で、表層はわずかに甘く、深層は金属臭を帯びる。地元では「飲んではならないが、触れてはよい」という慣習がある。触れた手に薄い記憶が残ることがある。残るが、残った者の記憶かどうかは確認されない。
帯のなかには、短い断章が埋まっている。泥の中から取り出される紙片、骨片、焦げた金属片は、すべて文章のかたちをとる。ただし主語と述語が欠けていることが多く、読めるのは副詞句のみであることが多い。副詞句だけの断章は、物語に戻されるのを待っているわけではない。副詞句のまま保存される権利を主張しているように見える。