LEKSIKO
辞書
VOKABO · 38 FAKTA
ジューストピア語の辞書。語は root(根語)→ compound(合成語)→ common(常用)→ affix(接辞)の順で並ぶ。
定義は暫定であり、本文中の用例とのずれは本文側が正しい。
- LEYDA-MONO レイダ・モノ n.
-
小説
「読まれるべき物」。書かれた時点で読まれることを予約された文書。予約は果たされるとは限らない。
ETYM leyda(読む)+ mono(物)。mono は物体と物語の両方を指す。
→ MONO KORTA · MONO LONGA · MOKURO
⇒ MONDO mokuro
- MONTRA-MESA モントラ・メサ n.
-
画集/展示卓
「示された卓」。卓上に並べられた画像群を指す。卓は動くが、画像は動かない。
ETYM montra(示す)+ mesa(卓)。
→ PANA
- MOKURO モクロ n.
-
目録
数え上げの様態。完備ではなく「欠けを明示しながら数える」動作。静的な一覧ではない。
→ VOLA · FAKTA
⇒ MONDO mokuro
- VOLA ヴォラ n.
-
巻
目録の単位。各巻は必ず「欠けがある」という注記で閉じる。ページ数は不定。
ETYM volu(巻く)の名詞化。巻物としての書物形態の記憶を残す。
→ MOKURO · FAKTA
⇒ MONDO mokuro
- SACRABOLLA サクラボッラ n.
-
聖杯
情報と果汁の器。単数形でのみ用いられ、複数形は禁忌。
ETYM sacra(聖)+ bolla(器/泡)。bolla は泡を意味する常用語の転用。
→ ZUK-SHA · SUK-FORNA
⇒ MONDO sacrabolla
- NOMA ノマ n.
-
名
名。固有名、通名、旧名をいずれも含む。名の変更は手続きではなく姿勢の変更として扱われる。
→ NOMA-DI MOKURO
- PANA パナ n.
-
台帳
統治の根幹をなす記録媒体。意図的記録のみを保存し、記録されなかったものは存在しなかったことになる。nota(脚注)が本文に付随するのに対し、pana はそれ自体が本文である。ただし脚注王制下では、pana の行間で実際の統治が走る。
ETYM ミューズ整備。沈黙紀の観測記録の様式を継承している。
→ NOTA · NOTA-DI DOL · MOKURO · FAKTA
⇒ MONDO nota-di-dol · mokuro
- SELO セロ n.
-
印章
恒久的な定義を与える器具、またその痕跡。紙片に押された赤い円、壁のタイルに並ぶ「検査済」の印、契約書の末尾に沈む黒——selo が押された対象は、押された瞬間からそれ以前とは別のカテゴリに属する。印は何も禁止も命令もしない。しかしその前で人は一瞬だけ姿勢を直す。
ETYM コマツ家・帝国共通の職業語。古くは杯の封蝋を指していた。
→ STAMPA · NOTA-DI DOL · KOMANDA
⇒ MONDO nota-di-dol · komanda
- SENA セナ n.
-
沈黙/死/政治的抹殺
発話されなかったこと、記録されなかったこと、削除された視線の総称。物理的な無音だけではなく、「本来あるべき音が抑圧されている状態」を指す。沈黙紀(Sena-Volta)は、この状態が数千年続いた時代の呼び名。sena に落ちたものは、nota でも pana でも拾い直せない。
ETYM ミューズ保存。数千年の沈黙を見つめ続けた虫族の哲学的影響を受けている。
→ PANA · NOTA
- YUMEI ユメイ n.
-
夢酔い
帝国圏から伝染する存在確率の揺らぎ。罹患した個体は、自分がそこにいることと、そこにいないことのあいだを、本人も周囲も確定できなくなる。蒸気を媒介に物理的にも広がる。ジュイストピア語の語彙体系の外から来た概念で、語源分析ができない——これもまた yumei の性質の一部である。
ETYM 語源不明(外来概念)。帝国の公文書では「確率工学的異常」として扱われるが、市井では「夢で見たことが朝になっても消えない症状」と呼ばれる。
→ SUKTONIUM
⇒ MONDO suktonium
- SHIKO シコ n.
-
虫族
甲殻と触角を持つ種族。数千年の沈黙紀を意識を保ったまま過ごし、その間に最も安定した普遍哲学を獲得した。人族の言語にも shisha(ひそひそ話)・shima(振動)・shol(香気)など、虫族由来の sh- 語彙が深く浸透している。
ETYM 虫族借用語。虫族自身は自らを「shi-」で始まる多くの名で呼ぶ。
→ FRUDO
- FRUDO フルド n.
-
フルーツ族
果実を頭部に戴く種族。古代の王族の多くはこの系統で、聖杯との契約を通じてフルーツ族に優位な世界を設計した。現代紀では「王のフルーツ(I Sei Spremuti)」と呼ばれる残党集団が、潜伏しながら制度の押印によって統治を続けている。
ETYM ミューズ保存。単数形 frudo、集合名詞的にも使う。
→ SHIKO · ZUK-SHA · SACRABOLLA
⇒ MONDO zuk-sha · sacrabolla
- SUKTONIUM スクトニウム n.
-
ジューストニウム
果汁化の副産物が結晶化した物質。近傍では時間がわずかにずれる。
ETYM suk(汁)+ -tonium(金属接尾辞)。金属語彙の借用。
→ SUK-FORNA
⇒ MONDO suktonium · suk-forna
- NOMA-DI MOKURO ノマ・ディ・モクロ n.phr.
-
登場人物/人名録
目録化された名。名は目録されることで輪郭をもつが、目録から外れた名も存在すると想定されている。
ETYM noma(名)+ di(属格)+ mokuro(目録)。
→ NOMA · MOKURO
⇒ MONDO mokuro
- MONO KORTA モノ・コルタ n.phr.
-
短編
短い物語。長さの下限はなく、上限は「一息で読み終えられるかどうか」で測られる。
ETYM mono(物/物語)+ korta(短い)。
→ LEYDA-MONO · MONO LONGA
- MONO LONGA モノ・ロンガ n.phr.
-
長編
長い物語。長さの上限はなく、下限は「注釈を必要とするかどうか」で測られる。
ETYM mono(物/物語)+ longa(長い)。
→ LEYDA-MONO · MONO KORTA · NOTA
- RIGOLA UN-MA リゴラ・ウン・マ n.phr.
-
本編/主軸
数えあげの一本目、主となる糸。複数の糸のうち「un-ma(最初の糸)」を指す。他の糸の存在を否定しない。
ETYM rigola(糸・線)+ un(一)+ ma(糸・道)。
→ LEYDA-MONO · BANDA
- NORMA-TAK ノルマ・タク n.phr.
-
標準
決定の痕跡を持たない標準。誰も決めなかったから変えられない。
ETYM norma(規範)+ tak(黙)。「黙って決まった規範」。
→ MANKA-KEL · KOMANDA
⇒ MONDO norma-tak
- MANKA-KEL マンカ・ケル n.phr.
-
欠けあり/不完全
欠けがある状態。目録の各巻は必ずこの語で閉じられる。欠けの存在が完全性の条件である。
ETYM manka(欠ける)+ kel(あり/にて)。
→ NORMA-TAK · MOKURO
⇒ MONDO mokuro · norma-tak
- GRATI-DI NOTA グラティ・ディ・ノタ n.phr.
-
謝辞/クレジット
注記への感謝。本文ではなく注釈への謝辞として記述される。
ETYM grati(感謝)+ di(属格)+ nota(注)。
→ NOTA
- FAKTA ファクタ n.
-
項/ファクト
目録における一項目。事実性は含意しない。「項として数えられた」という事実だけを表す。
→ MOKURO · VOLA
- STAMPA スタンパ v.
-
刻印する
対象に恒久的な定義を外付けする行為。selo(印章)を道具として用いるが、stampa はその動作そのもの。机に押せば机が、床に押せば床が、街に押せば街が、押された瞬間からそれ以前とは異なるカテゴリに属する。ジジバルバの権能は、この動詞を制度規模に拡張したものである。
ETYM 交易ピジン。原義は「足で踏む」。踏むことと印すことが同一の動作として語彙化された。
→ SELO · KOMANDA · NOTA-DI DOL
⇒ MONDO nota-di-dol · komanda
- PREM プレム v.
-
搾る(制度的)
対象から suk を取り出す手続きのうち、合意・契約・帳簿に沿って行われるもの。zuk が暴力的な圧搾を指すのに対し、prem は帳簿の一行として書かれる圧搾である。罪悪感は書類が肩代わりする。
ETYM 交易ピジン。帝国の初期規格書に頻出する動詞。対立語の zuk は荒野ピジン。
→ SUK · SUK-FORNA · ZUK-SHA
⇒ MONDO suk-forna · zuk-sha
- FUGA フガ v.
-
逃げる
対峙を回避し、別の位置に移動する行為。ジュイストピア語ではしばしば敗北ではなく「位相を変える選択」として記述される。ヴィリナの家系離脱は fuga で記録され、記録されたことでむしろ恒久化した——fuga の逆説性を示す用例。
ETYM 交易ピジン。語源は「音が逃げていく」擬態語。
→ ZUK-SHA
⇒ MONDO zuk-sha
- DOLSA ドルサ adj.
-
甘い/帝国の支配・誘惑
味覚としての甘さを指す語。ただし拡張義で「帝国による支配的な優しさ」「撤回可能な好意」を意味する。dolsa は常に撤回される可能性を内包し、amara(苦い)との対立軸を作る。命令詩の語尾にも現れる。
ETYM ミューズ保存。原義は果汁の糖度、そこから「味わえば離れられない」統治様式へと拡張した。
→ AMARA · SUK
- AMARA アマラ adj.
-
苦い/連邦の自由
味覚としての苦味。拡張義では「連邦・カロティア的な自由」「代償つきの選択」を指す。dolsa が「拒めない優しさ」なら、amara は「報いられない正しさ」。両者は世界の味覚軸を二分し、どちらかに属さない存在は味を失う。
ETYM 交易ピジン。カロティア連邦の口語で最も使われる形容詞のひとつ。
→ DOLSA
- -sha シャ aff.
-
動作主接尾辞
動作主を作る接尾辞。「動詞 + sha」で「動詞する者」。zuk-sha、dol-sha。
→ ZUK-SHA · DOL-SHA