M.005 · MONDO-DI NOTA · 制度
脚注王制 きゃくちゅうおうせい
NOTA-DI DOL
本文ではなく注釈によって世界を統治する体制。法は増殖し、本文は読みにくくなる。
脚注王制は、支配の所在を本文から注釈へ移すことで成立した体制である。王が命令詩を発するのではなく、王の不在を注釈が埋める。注釈は本文に従属するかのように配置されながら、実際には本文の意味を決定する。注釈が増えるにつれて本文は読みにくくなり、読みにくくなった本文は、読み返されなくなる。読み返されない本文は、注釈の判断に委ねられる。
脚注王制の特徴的な工学は、自己参照にある。注釈の中で「上記本文を参照」とされた場合、その本文の定義はさらに別の注釈を指す。連鎖は有限で閉じるとは限らない。閉じない連鎖は、外部から検証されない。検証されないものは、否定もされない。
この制度の施行者は、王ではない。施行者は不在である。不在の施行者によって施行される法は、誰の名でもない。誰の名でもない法に反対することは、自分自身に反対することになる。